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IVR(画像下治療)


 当院の放射線診断科では2024年から「IVR(画像下治療)」を本格的に開始しました。

IVR(画像下治療)とは

 IVRとは「Interventional Radiology」の略称で、日本語では「画像下治療(がぞうかちりょう)」と呼ばれます。
 X線透視、CT、超音波(エコー)などの画像診断装置で体内の様子をリアルタイムに確認しながら、カテーテル(細い管)や針を用いて行う治療および検査の総称です。

IVRの特徴

  • 低侵襲(体に負担の少ない治療)
    手術のように大きな切開を必要とせず、血管や皮膚に小さな穴をあけてアプローチします。そのため傷口が小さく、痛みや出血が少ないのが特徴です。体に与えるダメージが少ないため、術後の回復が早く、入院期間の短縮につながります。
  • 外科手術と同等の治療効果
    局所麻酔を中心とした低侵襲な治療でありながら、疾患によっては外科手術と同等の効果を得ることができます。

放射線診断科が担うIVRの役割と特徴

 循環器内科、心臓血管外科、脳神経外科などの各診療科でもそれぞれの専門領域でIVRが行われていますが、当院の放射線診断科では、他診療科が対応していない領域を中心にIVRを担当しています。

他診療科との連携・院内バックアップ体制

 画像診断のスペシャリストである放射線診断医がIVRを担当できる体制は、病院全体の医療の質と安全性を支える重要な基盤(バックアップ機能)となっています。
  • 複合的な症例・高難度症例への対応
    単一の診療科では対応が難しい部位の病変や、構造が複雑な血管病変に対しても、専門的な画像診断技術をもとに安全かつ精確なアプローチを行います。
  • 術後合併症への対応
    例えば、外科手術後に臓器の周囲に「仮性動脈瘤」が生じてしまう場合があります。動脈瘤の破裂による出血を防ぐため、緊急で治療を行う必要がありますが、そのような場合でも、放射線診断医がIVRで迅速に動脈瘤への血流を塞ぎ、破裂・出血を起こさせない治療を行える体制を整えています。

地域医療・救急医療への貢献

 当院は「断らない救急」をモットーに、24時間365日、軽症の初期救急から最重症の三次救急の患者さんまで幅広く受け入れています。
 放射線診断科で行うIVRは、事故などによる臓器・血管損傷、出血など、緊急で搬送されてきた患者さんにも対応
しています。
 IVRで緊急止血術を実施できる体制を整えていることで、救急治療の選択肢が増えることとなりますので、地域の救急医療および開業医の先生方からの緊急搬送受入に貢献できると考えています。

実施している主なIVR(治療・検査)

当院の放射線診断科で行っているIVRについて紹介します。

主な治療

  • カテーテルによる血管内治療
 手や足の付け根などの血管から「カテーテル」と呼ばれる細い管を入れ血管の内側から病変にアプローチする治療です。
 画像で体内を確認しながら行います。当科では「血管塞栓(そくせん)術」を中心に実施しています。
 ※塞栓(そくせん)術とは?
 カテーテルを通して「金属コイル」や「止血材」などの特殊な物質を血管内に送り込み、病気の原因となっている血管や出血部位に「フタ」をして血流を止める治療です。
 動脈瘤などの治療では、血管を塞ぐ「塞栓術」だけでなく、血管の通り道を保ちながら内側から補強する「ステントグラフト治療」と状況に応じて使い分けています。
(1)動脈瘤(どうみゃくりゅう)治療
 手術後の仮性動脈瘤や、臓器の周囲にできた動脈瘤などに対して行います。
 コイルでコブへの血流を遮断(塞栓)したり、ステントグラフトで血管の傷んだ部分を内側から補強したりして、破裂を未然に防ぎます。
 コブへ血液を送る血管の太さや形状、その先に血流を保つべき重要な臓器があるかなど、血管の部位や性状を精密に見極めることが重要です。
 当科では画像診断の専門性を活かして血管構造を細かく評価し、治療を行っています。

(2)緊急止血術(外傷性出血・急性出血)
 交通事故や転落事故などの外傷(内臓損傷や骨盤骨折など)による体内での出血に対し、救命のための緊急塞栓術を行います。
 出血している場所を特定し、カテーテルを用いて出血部位まで進みます。
 ゼラチンスポンジ(体内で自然吸収される止血材)や金属コイルなどで血管にフタをし、開腹・開胸手術をすることなく迅速に止血します。

(3)血管奇形などの治療
 血管と血管に異常なつながりができたり、複雑にからみ合った異常な血管の塊ができたりするものに対して治療を行います。
 カテーテルを用いて塞栓物質を注入し、異常な血流を遮断(塞栓)・コントロールします。
  • 非血管系の治療
 血管内を通るのではなく、CTなどでリアルタイムに体内を確認しながら、皮膚から直接針やカテーテルを挿入して行う治療です。
 CTガイド下ドレナージ(膿や不要な液体の排出)
 体内に感染が起きて膿(うみ)が溜まってしまう「膿瘍(のうよう)」などの状態に対し、CTで体内を確認しながらカテーテルを膿瘍部まで進め、体外へ排出(ドレナージ)する治療法です。
 超音波(エコー)では観察しにくい体の奥深く(深部)に膿が溜まっている場合でも、周囲の臓器や血管の位置を正確に把握し、ドレナージすることができます。

主な検査

  • CTガイド下生検(腎生検など)
 病気の詳しい原因や状態を調べるために、体内の組織の一部を採取する検査です。
 CTで針を刺す角度や周囲の血管・臓器との距離を細かく確認しながら、背中などからごく細い針を挿入して組織を採取します。
 一般的な腎生検は超音波を用いて行われますが、病変の位置や体の構造上、超音波では確認しにくい場合などにCTを使用します。
  • 副腎静脈サンプリング
 「原発性アルドステロン症」という病気の治療方針を決定するために行う検査です。

【原発性アルドステロン症とは?】
 腎臓の上にある「副腎(ふくじん)」という臓器に良性の腫瘍などができ、血圧を上げるホルモン(アルドステロン)が過剰に分泌されてしまう病気です。お薬が効きにくい高血圧や、血液中のカリウムが低下する「低カリウム血症」の原因となります。

【検査を行う目的】
 副腎は左右に1つずつあります。治療法を決めるためには、「左右どちらの副腎からホルモンが過剰に出ているのか」を正確に突き止める必要があります。
 ・片側だけに原因がある場合:手術で原因となっている片方の副腎を摘出する治療を検討します。
 ・両側に原因がある場合:手術ではなく、お薬でホルモンの働きを抑える「薬物療法」を行います。
 このように「手術で治せる高血圧なのか」を見極め、適切な治療方針を決めるための重要な検査となります。

【検査の方法】
 足の付け根の静脈からカテーテルを挿入し、画像で血管を確認しながら、左右それぞれの副腎静脈(ホルモンの出口)まで進めます。
 そこで採血を行い、左右の副腎から分泌されているアルドステロンの量を測定・比較します。

ご相談・受診について(開業医の先生方・患者さんへ)

 当科では、院内の各診療科と密に連携をとるだけでなく、地域のクリニック・病院の先生方からのご相談にも柔軟に対応しております。IVRの適応可否などについてご質問などがございましたら、お気軽に当科までお問い合わせください。患者さんにおかれましては、まずはかかりつけの先生にご相談をお願いいたします。