乳房の「整容性」を重視した手術
乳がんの手術は進化してきており、がんを取り除くことと、手術後の乳房の自然な形を保つことの両立を目指せるようになってきました。
当院では患者さんの状態やご希望に合わせて、乳房の「整容性」(術後の乳房の形が自然であること)を重視した手術を行っています。
当院では患者さんの状態やご希望に合わせて、乳房の「整容性」(術後の乳房の形が自然であること)を重視した手術を行っています。
解説医師紹介
外科・消化器外科 科長
米沢 圭日本乳癌学会乳腺指導医・専門医・評議員、乳房再建エキスパンダー/インプラント基準責任医師、日本外科学会指導医、日本消化器外科学会指導医
米沢 圭日本乳癌学会乳腺指導医・専門医・評議員、乳房再建エキスパンダー/インプラント基準責任医師、日本外科学会指導医、日本消化器外科学会指導医
外科・消化器外科 医長
ゲノム医療センター副センター長
矢﨑 真澄日本外科学会外科専門医、乳房再建エキスパンダー/インプラント実施医師、日本消化器外科学会消化器外科専門医
ゲノム医療センター副センター長
矢﨑 真澄日本外科学会外科専門医、乳房再建エキスパンダー/インプラント実施医師、日本消化器外科学会消化器外科専門医
早期乳がんの主な治療は手術による切除術です。腫瘍が小さく、乳頭から距離のある乳がんは乳房部分切除術(Bp)が適応となります。
侵襲の小さい手術ではありますが、乳房に切開創の瘢痕が残ったり、乳房の変形や左右の非対称が生じたり、整容性(術後の乳房の形の自然さ)の低下が課題でした。
整容性を重視した乳がん手術
当科では、以下のような整容性を重視した乳がん手術を行っています。
- 手術法01:「切らない」乳がん手術:乳がんラジオ波焼灼療法(RFA療法)
- 手術法02:元の乳房の形を保ちやすく:乳房部分切除術+スーチャースキャホールド法(SST)
- 手術法03:より自然なふくらみを再現:乳頭乳輪温存乳房全切除術(NSM)+乳房再建
手術法 01:乳がんラジオ波焼灼療法(RFA療法)
2023年12月より新たに保険適用になった乳がんラジオ波焼灼療法(RFA療法)は「切らない手術法」で、新しい治療選択肢となります。
乳がんRFA療法は、がんの中に細い針状の電極を差し込んでラジオ波帯の電流を流し、発生する熱を利用してがんを焼灼する治療法で、皮膚切開を伴わないので皮膚に手術瘢痕が残りません。また、乳房の変形も乳房部分切除(Bp)より少なく整容性の高い手術です。ただし、通常の乳がん手術より、適応条件が厳しくなります。(乳がんラジオ波焼灼療法適正使用指針 を参照ください)
術後は放射線治療、薬物療法等の治療法と組み合わせて治療を行い、厳密な経過観察により、切除術と同等の根治性を目指します。
静岡県内では当院を含め3施設が日本乳がん学会から、患者さんが安心して治療を受けられる、経験のある医師と治療にかかる体制が整った施設として、乳がんのラジオ波焼灼療法の実施医療機関として認証を受けています。(2025年8月4日現在)
当院では、2024年9月より施行可能となり、2025年9月までに4例を施行し良好な手術成績を収めています。
乳がんRFA療法は、がんの中に細い針状の電極を差し込んでラジオ波帯の電流を流し、発生する熱を利用してがんを焼灼する治療法で、皮膚切開を伴わないので皮膚に手術瘢痕が残りません。また、乳房の変形も乳房部分切除(Bp)より少なく整容性の高い手術です。ただし、通常の乳がん手術より、適応条件が厳しくなります。(乳がんラジオ波焼灼療法適正使用指針 を参照ください)
術後は放射線治療、薬物療法等の治療法と組み合わせて治療を行い、厳密な経過観察により、切除術と同等の根治性を目指します。
静岡県内では当院を含め3施設が日本乳がん学会から、患者さんが安心して治療を受けられる、経験のある医師と治療にかかる体制が整った施設として、乳がんのラジオ波焼灼療法の実施医療機関として認証を受けています。(2025年8月4日現在)
当院では、2024年9月より施行可能となり、2025年9月までに4例を施行し良好な手術成績を収めています。
手術法02:乳房部分切除術(Bp)+スーチャースキャホールド法(SST)
乳房部分切除術(Bp)を行うと必ずすき間ができますが、以前は
- 縫い合わせず、そのままにしておく → 同部位の皮膚陥没・変形が高い確率で起こる
- 乳腺断端・脂肪断端を縫い寄せる → 左右乳房の非対称が生じる
- 乳房の周囲組織(脂肪弁・筋肉・筋膜)を移動させて形成する → 大きな皮膚切開を伴う
スーチャースキャホールド法(SST)は近年頻用されるようになってきた手術手技で 部分切除後の断端(円周状)に複数の縫合糸をかけて格子状に骨組みを作るようにします。部分切除によって生じたすき間がそのままの状態で保たれ、皮膚の陥没が予防できます。
またそのすき間には組織液が貯留し、縫合糸を足場に組織形成が促進され、すき間が結合織・脂肪組織に置き換わり乳房が元の形態を保ちやすくなります。切開の追加や組織の移動を必要としないので患者さんにも優しい手術です。
当科では部分切除術(Bp)のほぼ全例でこのSSTを行っており、良好な成果を得ています。
*「スーチャー(Suture)=縫う」、「スキャフォールド(Scaffold)=骨組み・足場」という意味で、「縫い方の工夫で形を整える技術」です。
またそのすき間には組織液が貯留し、縫合糸を足場に組織形成が促進され、すき間が結合織・脂肪組織に置き換わり乳房が元の形態を保ちやすくなります。切開の追加や組織の移動を必要としないので患者さんにも優しい手術です。
当科では部分切除術(Bp)のほぼ全例でこのSSTを行っており、良好な成果を得ています。
*「スーチャー(Suture)=縫う」、「スキャフォールド(Scaffold)=骨組み・足場」という意味で、「縫い方の工夫で形を整える技術」です。
手術法03:乳頭乳輪温存乳房全切除術(NSM)+乳房再建(形成外科)
乳頭乳輪温存乳房全切除術(NSM)は乳房の外側を皮膚切開(10㎝前後)し、そこから乳腺を周囲から剥離(背面は大胸筋、前面は皮膚・乳頭乳輪から)し、全乳腺を摘出する手術です。乳頭乳輪に近接していない乳がんで適応となります。
乳房再建を行う場合が多く、人工物(エキスパンダー留置→(約半年後)インプラントへ入れ替え)や自家組織(広背筋皮弁・腹直筋皮弁等)で乳房のふくらみを再建します(当院・形成外科にて)。
上記の01、02の手術に比べると大きな手術になりますが、皮膚切開も乳房の外側なので目立ちにくく、乳房の形態・大きさに合わせて再建することができるので整容性の高い手術となります。
乳房再建を行う場合が多く、人工物(エキスパンダー留置→(約半年後)インプラントへ入れ替え)や自家組織(広背筋皮弁・腹直筋皮弁等)で乳房のふくらみを再建します(当院・形成外科にて)。
上記の01、02の手術に比べると大きな手術になりますが、皮膚切開も乳房の外側なので目立ちにくく、乳房の形態・大きさに合わせて再建することができるので整容性の高い手術となります。
おわりに
乳がんの治療は、手術・薬物療法・(症例により)放射線療法による集学的治療により高い治療効果を得ています。(転移・再発症例では薬物療法が主体になります。)
矢﨑真澄医師が乳がん診療全般について解説していますので、ぜひご参照ください。
矢﨑真澄医師が乳がん診療全般について解説していますので、ぜひご参照ください。