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新しいマーキングシステム RFID


新しいマーキングシステム RFID ー小さな肺がんを小さく切除するためにー

近年は画像診断技術の進歩により高解像度のComputed Tomography (CT) が簡便に撮影されるようになり、これに伴って早期の肺がんが診断される機会が増加しています。日本肺癌学会の肺癌診療ガイドライン2024年版では、早期の肺がんで一定の条件を満たすものに対しては、従来の手術よりも肺の切除量を減らした手術(縮小手術)が推奨されています。肺を小さく切り取ることにより肺の切除量を減らすことができれば、患者さんは手術後により元気に過ごすことができます。

ここで克服すべき問題点があります。小さな肺がんは小さいために手術中に場所を認識するのがむずかしいことです。肺がんの場所が認識できなければ、肺のどこをどのように切除すればよいか判断に迷うことがあります。肺がんを小さく切り取りたいけれども、あまりに小さく切ってがんが取りきれないのは困りますし、かといってしっかり取りきるために大きく切るのは肺の損失が大きいので望ましくない。そこで、小さな肺がんに対して、何かマーキングすることにより手術中に場所を認識できる方法はないか、と考えました。

日常生活で活用されているRFIDの一例

そこで当科で導入したのが、Radiofrequency Identification (RFID) を応用した新しいマーキング方法です。RFIDとは「電波を用いてICタグのデータを非接触で読み取るシステム」です。身近な応用例を挙げますと、電子マネー、カードキー、セルフレジ、回転ずしなど、日常生活の多くの場面でその技術が使用されています。
手術に先立って、気管支鏡という内視鏡を用いて気管・気管支から2mm大のICタグを病変近傍に留置します。そして、留置されたICタグを手術中に探知器で検出することにより、病変部位を特定してピンポイントで必要十分な量の肺切除を行います。
ここで重要なのは、RFIDは「ICタグと接触しなくても」認識できることです。ICタグと探知器の距離を音で知らせてくれるようにしています。具体的には、距離が短くなる(近づく)と高い音が鳴り、距離が長くなる(遠ざかる)と低い音が鳴るという、まさに金属探知機のような使い方ができることが最大の利点です。RFIDマーキングは2025年現在、徐々に全国に普及しつつありますが、当院は東海地方でいち早く本技術を導入しました。
また、小さな早期肺がんに対する区域切除術で力を発する「ロボット支援手術」とRFIDを併用することで、より精密正確な手術が可能となります。当院ではロボット支援胸腔鏡手術を数多く行っています。

当科では小さな肺がんに対して小さく肺を切り取ることが望ましい患者さんに対して、RFIDを応用したマーキングシステムを使用することにより、より低侵襲かつ精密な手術をご提供しています。
 

RFIDの説明の図